新国立競技場の屋根ってどうなっているの?と疑問を抱いたことはありませんか?
東京オリンピックのメイン会場として注目を浴びた新国立競技場の屋根が「閉まる?閉まらない?」論争がありました。
結論から言うと、開閉式ではないので閉まることも開くこともありません。
この記事では、新国立競技場の屋根設計の概要や開閉式屋根が採用されなかった理由、そして現在の屋根がもたらすメリットと課題について詳しく解説しています。
雑学的に知っておきたい、新国立競技場の屋根の背景にあるストーリーや設計者の意図など建築の魅力をより深く理解することができますよ。
新国立競技場の屋根は閉まることがない理由を深堀りします
新国立競技場の屋根について、その設計や特徴、そして採用された理由を詳しく見ていきます。
結論、閉まることはない固定式屋根がなぜ選ばれたのかを理解することで、新国立競技場のトリビア的な情報を身に付けることができます。
- 新国立競技場の屋根設計の概要
- 開閉式屋根が採用されなかった理由
- 現在の屋根の特徴と役割
① 新国立競技場の屋根設計の概要
新国立競技場の屋根は、固定式の構造を採用しています。
理由としては、建築コストの削減や工期短縮を目的としながらも、日本の伝統的な建築美を取り入れることを優先したからです。
鉄骨と国産木材を組み合わせた屋根の構造は、耐久性と美観を兼ね備えており、明治神宮外苑の豊かな自然との調和を目指したデザインになっています。
特に注目すべきは「トップライト」と呼ばれるガラス部分が屋根の一部に設置されていることです。
トップライトを設けることで、フィールドに自然光を取り入れることができ、天然芝の育成を助けています。
トップライトとは、自宅で言うと天井部にあるガラスです。自然の光が入ってくるので気持ち良い空間になるんですよね。
トップライトの設計は、日本らしい温もりを感じさせる木材の枠に囲まれ、美しさと実用性を兼ね備えたものとなっています。
② 開閉式屋根が採用されなかった理由
もともと新国立競技場の設計には開閉式屋根の導入が計画されていました。
イラク出身でのちにイギリスを拠点にした建築家ザハ・ハディットさんが設計されたのです。
屋根を開け閉めできると、天候に関係なくイベントを開催できます。
晴れた日の明るい光が差し込むなら屋根を開けて、野外コンサートやスポーツの試合を開催する。
雨が降った日は、屋根を閉めて雨風の影響のないイベントを開催する、といったことですね。
しかし、設計段階での建設費用の大幅な増加や、施工期間の長期化といった現実的な課題に直面し、結果的に開閉式の屋根の計画は断念されました。
東京オリンピックに間に合わないと大事になったでしょうからね…。
開閉式屋根にするならば、構造上、非常に頑丈なアーチ構造が必要となります。
この構造設計や施工費がコスト増となったのです。そのため、費用を抑えるための再設計が行われ、現在の固定式屋根に変更されました。
ちなみに結果的に、日本の建築家である隈研吾さんのデザインが採用されました。
③ 現在の屋根の特徴と役割
現在の新国立競技場の固定式屋根は、観客席をしっかり覆うことで快適な観戦環境を作り出し、中央部分は覆われていない設計となっています。
このデザインは、天然芝の育成を優先した結果として採用されました。自然光を最大限に活用し、芝生の健康を維持する工夫がなされているわけですね。
また、屋根は日本の伝統的な建築様式を参考にしており、周辺の緑と調和するようにデザインされています。
これは単に美観を追求するだけでなく、環境保全への配慮も含まれており、スタジアム全体が地域と一体化した空間を目指して設計されていることが分かります。
新国立競技場の屋根の課題と可能性
固定式屋根は、利点もあれば当然ですが難点や課題もあります。
特に、上記でも説明したとおり、雨天時のイベント開催では中央部分から雨風が入るということです。
それでは以下のとおり、深堀りしてみていきましょう。
- 雨天時のイベント開催への影響
- 屋根の中央部分が覆われていないメリット・デメリット
- トップライト設置による芝生育成への効果
① 雨天時のイベント開催への影響
固定式屋根は観客席を覆う構造にはなっていますが、フィールド中央部分はオープンのため、雨天時のイベントや競技の進行に影響を与えることに…。
サッカーや陸上競技の試合であったり、コンサートの場合だと屋根のある観客席ならまだしも、アリーナ部となるフィールド客席はずぶ濡れになってしまいます。
もっと言ってしまうと、大雨が降った場合、選手のプレー環境だけでなく、観客の視覚的な楽しみも損なわれますよね。
水たまりができたグランドのせいでボールが止まったり、選手が滑って転んだりして、悪い環境での試合観戦だとファンもがっかりしてしまいます。
② 屋根の中央部分が覆われていないメリット・デメリット
中央部分が覆われていないメリットとしては、天然芝の育成と晴れた場合の自然光、夜間の場合はキレイな夜空の下で試合やイベントが行われることです。
自然光を直接浴びることで芝生が健全に育成されますし、選手のプレー環境を最適な状態に保ちます。
ファンや観客としては、自然光や風、夜の星空をも楽しむことができることです。
その一方でデメリットを挙げると、雨や風の強い日であったり、夏季の直射日光が強い日、気温が高い日だと、選手も観客も疲れちゃいます。
このように、固定式屋根は一長一短のメリット・デメリットがありますが、自然環境を活かすという理念に基づきつつ、地球環境への配慮がなされた設計と言われています。
ただ、そうは言っても、天気の影響を受ける試合やイベントではどうしても不便さを引き起こしているのも事実です。
③ トップライト設置による芝生育成への効果
トップライトは、新国立競技場の屋根デザインの中でも特筆すべき特徴です。
トップライトのガラス部分は、フィールドに必要な自然光を効率よく届けることで、芝生の健全な成長を助けています。
また、採光だけでなく、スタジアムの外観デザインにも寄与しており、訪れた人々に独特の印象を与えています。
一般住宅でも採用される技術を競技場に応用したこの設計は、技術とデザインの融合例として評価されています。
ただし、ガラス部分や接合部の劣化に伴う雨漏りリスクについても、長い目で見ると検討する必要がありますし、長期的なメンテナンスが重要となってきます。
開閉式屋根の実現可能性と未来の展望
それでは最後に、新国立競技場に開閉式屋根を導入することの可能性や、今後のスタジアム設計における展望について以下の内容で考えていきましょう。
- 追加工事での開閉式屋根の実現可能性
- 開閉式屋根による収益性向上の期待
- 他国のスタジアムに学ぶ設計事例
① 追加工事での開閉式屋根の実現可能性
新国立競技場に開閉式屋根を追加する案は、建設当初から議論されてきました。
結果的に不採用になりましたが、技術的に開閉式の屋根の施工ができないわけではありません。
ただし、既に完成しているので、追加工事となると莫大な費用と時間が必要です。
もし開閉式屋根を追加するとなれば、現在の構造に耐えうる新たな支柱や補強が必要となります。
長期間の工事となると、その間は試合やイベント開催ができないので収益もガタ落ちに…。
これらの課題を克服するためには、関係者、現場技術者や建築家との連携が求められるでしょう。
② 開閉式屋根による収益性向上の期待
開閉式屋根が実現すれば、当然ですが収益は向上します。
雨天でもコンサートや大規模イベントを安心して開催できますので使用頻度が多くなりますからね。
その結果、収益源の多様化が可能となり、長期的な維持管理費の負担を軽減する可能性があります。
また、開閉式屋根のある競技場となれば、国内外の大会やイベントの誘致にも有利です。
天候に左右されずにイベントが行えることは、大会主催者や観客にとって大きな安心です。
そして何より、開閉式の屋根の競技場を体感するって、めっちゃワクワクしますよね!
③ 他国のスタジアムに学ぶ設計事例
他国の開閉式屋根を持つスタジアムの事例は、新国立競技場の将来的な改修や新たなスタジアム設計における重要な参考材料となります。
例えば、アメリカの「メルセデス・ベンツ・スタジアム」やイギリスの「ウェンブリー・スタジアム」は、開閉式屋根を活用して幾つものイベントが開催されています。
開閉式屋根を持つことで、悪天候下でもイベントが開催され、多くの観客が楽しんで素晴らしい思い出を作っているのです。
日本でも、既存の開閉式屋根を持つ施設の事例から学び、技術的な課題やコスト問題を克服して世界に誇れる開閉式スタジアムを建設してほしいですよね!
まとめ:新国立競技場の屋根は閉まる…いや閉まらないのはコストの問題だった
新国立競技場の屋根は、固定式として設計され、日本の伝統建築を取り入れたデザインが特徴です。
コスト削減や施工期間の短縮が優先され、開閉式屋根の導入は見送られました。
ということで現在の構造は、トップライトを活用した自然光の取り入れや環境調和への配慮を重視した屋根になっています。
ただし、固定式の屋根でオープンなので、雨天時の試合やイベント開催が中止になる可能性もあります。
これらの課題を克服し、更なる技術向上・収益性向上となれば、開閉式屋根のスタジアムが建設されることになるはずです。
とはいえ、今の新国立競技場は、たくさんの魅力でいっぱいです。
設計背景や課題を知ることで、ただのスポーツ施設ではなく、日本の技術と美意識を体現したランドマークとしての魅力を感じることができるのです。
新国立競技場に行った時には、屋根のデザインや特徴、構造物などにも注目してみてくださいね。