「箱根駅伝優勝」とは別に語り継がれるエピソードの一つ「繰り上げスタート」
「なぜ箱根駅伝に繰り上げスタートがあるのか?」という問いの答えは、結論から言ってしまうと交通規制を最小限に抑えるためです。
この記事では、繰り上げスタートの詳細なルールや選手たちの心理的影響、さらには観客が目撃するドラマチックなエピソードを深掘りしていきます。
タスキが渡らなかった悔しさや、奇跡的に回避された瞬間、そして繰り上げスタートというある種の屈辱を乗り超えて輝く選手たちの姿…。
箱根駅伝ならではの感動と挑戦をお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。
【箱根駅伝】繰り上げスタートとは?選手の目の前でもアウト?
箱根駅伝で繰り上げスタートが起きる理由と背景について、以下の4つの内容で詳しく解説します。
- 繰り上げスタートとは?ルールと仕組み
- 中継所ごとの繰り上げ時間の違い
- なぜ繰り上げスタートが設けられたのか?目的と影響とは?
- 選手の目の前で時間切れになればやっぱりアウト?
① 繰り上げスタートとは?ルールと仕組み
そもそも繰り上げスタートとは、先頭走者から一定時間遅れた場合、前走者が中継所に到着する前に次の走者がスタートする制度です。
このルールは、箱根駅伝のような長距離競技でよく見られるルールです。
中継所ごとに設定された時間内に前走者が到着しない場合、次走者がタスキなしでスタートするわけです。
極端な例え話をすると、選手の体調が急に悪くなってフラフラしながらも先頭から2時間遅れでタスキが渡ったとします。
箱根駅伝のコースは国道1号なので、特に東京~神奈川の交通規制を2時間も続けたらどうなるでしょうか?
物流トラックは?電車は?救急車は?…現実的に不可能です。ですから【繰り上げスタート】が採用されたのですね。
ということで、往路では10~15分、復路では20分といった時間差が設定されています。
交通規制を最小限に抑えるためには、どうしても必要不可欠というわけです。
② 中継所ごとの繰り上げ時間の違い
箱根駅伝では中継所ごとに繰り上げ時間が異なります。具体的には以下の3パターンとなります。
- 先頭から10分:【往路1→2区】鶴見中継所と【往路2→3区】戸塚中継所
- 先頭から15分:【往路3→4区】平塚中継所と【往路4→5区】小田原中継所
- 先頭から20分:【復路全中継所】
上記で説明した通り、基本的には交通事情を考慮して決められています。
都内や横浜といった普段から交通量が多い場所は時間が短めですけど、復路は20分と長めなんですね。
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箱根駅伝は、優勝争いと同じように注目されるのが繰り上げスタート。ちなみに過去最多の繰り上げスタートは何校だっかたご存じですか?
こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
③ 繰り上げスタートの目的と影響
繰り上げスタートの主な目的は、交通渋滞の回避と円滑な大会運営ということがわかりました。
一般道路を使用する箱根駅伝では、どうしても長時間の通行止めは地域住民や地域に負担をかけてしまいます。
また、選手たちや各大学チームにとっては、とてつもなく大きなプレッシャーとなっています。
何らかのアクシデントで本来の力が発揮できなかった選手が、「自分のせい」でタスキをつなげることができなかったら…。
もちろん、その選手一人に責任を押し付けるような酷い仲間はいないのでしょう。
とはいえ、箱根駅伝のために苦しい練習を乗り越えてきた選手たちは、責任感の強い人ばかりです。
「もし、自分の走りでみんなのタスキを繋げられなかったら…」
だからこそ、箱根駅伝は毎年感動を生むのでしょうね。
繰り上げスタートは箱根駅伝の運営上避けられない一方で、選手や観客に与える影響を考慮した運営が求められています。
④ 選手の目の前で時間切れになればやっぱりアウト?
あと10秒、9、8、7…もちろんルール上は、中継所ごとに決められたタイムに1秒でも遅れたら繰り上げスタートとなってしまいます。
…ただですね、実は長い歴史をもつ箱根駅伝には、感動的なドラマがあったんです!
箱根駅伝ファンにはおなじみなシーンなのですが、こちらの動画をご覧ください。
左上にある中継テレビのタイムを見る限り、規則上は繰り上げスタートになってしまうのでしょう。
しかし、公式ではなんとかタスキをつなぐことができました。
「規則は規則だろ」といった否定的な意見は聞いたことがありません。
むしろ、審判・運営スタッフの対応を素晴らしいと称賛の言葉が多かったことに、箱根駅伝ファンの心の美しさがあるのでしょうね。
【箱根駅伝】繰り上げスタートになったら失格?順位はどうなるの?
何が起こるかわからないのが箱根駅伝の醍醎味です。勝者だけでなく、敗者も称えられ、ボクたちに感動を与えてくれます。
そんな箱根駅伝では、無念にも繰り上げスタートとなったチームは即失格になるのでしょうか?
結論から言うと、たとえ繰り上げスタートになったとしても失格にはなりません。
ここ数年では、青山学院大学、駒澤大学といった強豪校がとてつもないスピードタイムを叩き出すために、毎年のようにタイムオーバーで繰り上げスタートとなってしまいます。
それでも、棄権にならない限り最終的に順位は付きます。
具体的には、繰り上げスタートしてゴールした選手の遅れた時間が合計タイムに加算されます。
きちんと遅れた分まで計算されているので総合順位が出るのですね。
ですから、繰り上げスタートでタスキがつながらなかったとしても、次の区間ランナーが挽回することで順位を上げていくことができるのです。
復路での一斉スタートと同じく、トータルタイムで最終順位が決定されます。
特に復路では、走っている順番で惑わされように「タイム」で順位を判断しなければいけないのです。
まとめ:箱根駅伝ならではの繰り上げスタート…目の前で途切れたタスキもまた感動的
箱根駅伝の繰り上げスタートは、交通規制を最小限に抑えるための制度ですが、選手や観客にとっては感動と悔しさが交錯する瞬間です。
繰り上げスタートの規則をもう一度確認しておきましょう。
- 先頭から10分:【往路1→2区】鶴見中継所と【往路2→3区】戸塚中継所
- 先頭から15分:【往路3→4区】平塚中継所と【往路4→5区】小田原中継所
- 先頭から20分:【復路全中継所】
中継所でのタスキの受け渡しができなかった場面は、選手にとって大きな精神的負担になりがちですが箱根駅伝ファンには深い印象、いや感動すら残してくれるのです。
一方で、制限時間ぎりぎりにタスキをつなぐ奇跡の瞬間や、繰り上げを経験した選手たちがその後の箱根で大活躍することも多々あり、多くの人々に勇気と希望を与えます。
箱根駅伝は、繰り上げスタートを含むさまざまなドラマが生まれる舞台です。
次の箱根ではどんなドラマと感動が待っているのか、今から楽しみです。