高校野球において、通算本塁打記録は注目を集める指標の一つです。
記憶に新しいのは、2023年夏の甲子園で話題となった花巻東の佐々木麟太郎選手の通算140本塁打です。
しかし、一見豪快に見える高校通算最多本塁打ランキングですが、実は様々な要因によって左右される不安定な記録なのです。
本記事では、高校野球ファンや選手が気になる「高校通算本塁打があてにならない」と言われてしまう4つのポイントを詳しく解説します。
また、高校通算本塁打ランキング30も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
高校通算本塁打があてにならない4つの理由とは?
- 対戦相手のレベルによるから
- 練習試合もカウントされるから
- グラウンドの大きさによるから
- 選手のおかれている環境によるから
大まかに分けて、上記3つの理由から「高校通算本塁打があてにならない」と言われています。
それでは一つずつ見ていきましょう。
対戦相手のレベルによるから
まず、第一の理由として真っ先に思い浮かぶ理由がこちらです。
高校野球における選手の実力差は、地方大会で初戦敗退するチームと甲子園優勝を争うチームの間には、雲泥の差があると言っても過言ではありません。
この実力差は、特にホームランの価値に顕著に表れます。
例えば、130km/h台のストレートを投げる投手から何本ホームランを打っても、甲子園で140~150km/h台の速球を投げるエースから打てるとは限りません。
つまり、単純にホームランの本数だけでなく、「誰から打ったのか?」という点が非常に重要になってくるのです。
ドラフト候補の投手から打つホームランと、地方大会初戦敗退レベルのチームの投手から打つホームランでは、その価値に大きな差があります。
言葉は悪いですけど、地方大会の初戦を見ていると「ホームランを打ってください!」と言わんばかりのボールを投げるピッチャーがいます。
ボールの出所が見やすい、ボールの軌道が見やすい、とりあえずストライクが入れば良い…といった条件が重なるのでしょうね。
練習試合もカウントされるから
以外に知られていない事実がコレです。
「え?通算本塁打って公式戦だけじゃないの!?」とビックリする高校野球ファンも多いのではないでしょうか。
通算本塁打は、公式戦だけでなく練習試合も含めて数えられるので、試合の数が多い高校の選手に有利な点があります。
例えば、たくさんの練習試合や招待試合に参加できる高校の選手は、バッターボックスに立つ回数が増えます。そのため、ホームランを打つチャンスも自然と多くなります。
近くに対戦相手がいない高校であれば練習試合の相手を見つけるのが難しいですし、大阪桐蔭のような名門校は練習試合の数も多いので、打席に立つ分母が必然的に大きくなります。
つまり、練習試合に出る機会が多ければ多いほど、ホームランを打つ可能性も高くなるわけですね。
グラウンドの大きさによるから
当然ですが、高校野球の練習試合や公式戦は、各高校のグラウンドであったり会場となる球場で大きさが違います。
両翼100メートルを超える広大なグラウンドではそうそうホームランは出ないでしょう。
また、昔の甲子園のラッキーゾーンがそうでしたけど、ラッキーゾーンのおかげでホームランになったケースは多々あります。
プロ野球ですら、ホームランが出にくいバンテリンドームナゴヤは101メートルです。
練習試合は通常、どちらかの高校のグラウンドで行われます。そのため、グラウンドが狭い高校で試合を行えばホームランを量産しやすいと言えます。
選手のおかれている環境によるから
例えばですけど、PL学園の桑田真澄選手、清原和博選手がそうだったように、1年から試合に出れる環境であれば、その分通算本塁打が増えるわけです。
(もちろん1年からレギュラーとして出場できる実力がありましたが)
その一方で、1・2年生時はまだ体が出来上がっておらず、3年生でようやく花咲く選手もいるのです。
1・2年で公式戦はおろか練習試合にも出れないと、やはり2年分の差は大きいです。
また、強豪校で甲子園に出場できる環境であれば、その分試合数を増えますからね。
高校通算本塁打ランキング【ベスト30】
2024年現在での高校通算本塁打ランキング【ベスト30】は以下のとおりです。
HR数 | 選手名 | 高校 | 年代 | |
---|---|---|---|---|
1 | 140HR | 佐々木 麟太郎 | 花巻東 | 2023 |
2 | 111HR | 清宮 幸太郎 | 早稲田実業 | 2017 |
3 | 107HR | 山本大貴 | 神港学園 | 2012 |
4 | 97HR | 黒瀬 健太 | 初芝橋本 | 2015 |
5 | 94HR | 伊藤 諒介 | 新港学園 | 2010 |
6 | 87HR | 中田 翔 | 大阪桐蔭 | 2007 |
7 | 86HR | 大島 裕行 | 埼玉栄 | 1999 |
8 | 85HR | 横川駿 | 新港学園 | 2011 |
9 | 83HR | 鈴木健 | 浦和学院 | 1987 |
中村剛也 | 大阪桐蔭 | 2001 | ||
10 | 78HR | 田原 伸吾 | 此花学院 | 1985 |
11 | 77HR | 谷田 成吾 | 慶應 | 2011 |
12 | 76HR | 三宅 浩史郎 | 新港学園 | 2013 |
13 | 75HR | 今井 康剛 | 松山商 | 1996 |
森 章剛 | 藤蔭 | 1997 | ||
山下 航汰 | 健大高崎 | 2018 | ||
14 | 74HR | 長谷沢 勝 | 埼玉 | 1993 |
伊奈 龍哉 | 近江 | 2006 | ||
15 | 73HR | 橋本 昭 | 盾津 | 1998 |
竹内 友宏 | 東温 | 2001 | ||
岡本 和真 | 智弁学園 | 2014 | ||
16 | 72HR | 山本 竜也 | 久居農林 | 2001 |
井村 展章 | 育英 | 2010 | ||
17 | 71HR | 大野 貴洋 | 所沢商 | 1996 |
藤嶺 典優 | 相洋 | 1988 | ||
高橋 周平 | 東海大甲府 | 2011 | ||
奥浪 鏡 | 創志学園 | 2013 | ||
18 | 70HR | 城島 健司 | 別府大付 | 1994 |
平田 良介 | 大阪桐蔭 | 2005 | ||
有薗 直輝 | 千葉学芸 | 2021 | ||
19 | 69HR | 阿部 和豊 | 気仙沼向洋 | 1994 |
筒香 嘉智 | 横浜 | 2009 | ||
20 | 68HR | 平尾 博司 | 大宮東 | 1993 |
藤島 誠剛 | 岩陽 | 1987 | ||
今井 順之助 | 中京 | 2016 | ||
野村 大樹 | 早稲田実 | 2018 | ||
浅野 翔吾 | 高松商業 | 2022 | ||
21 | 66HR | 寺坂 知哉 | 大阪学院大高 | 2000 |
吉本 亮 | 九州学院 | 1998 | ||
22 | 65HR | 大田 泰示 | 東海大相模 | 2008 |
寺島 夢二 | 丸子修学館 | 2009 | ||
安田 尚憲 | 履正社 | 2017 | ||
23 | 64HR | 清原 和博 | PL学園 | 1985 |
鈴木 将光 | 遊学館 | 2005 | ||
松本 章 | 興誠 | 1998 | ||
益子 亘 | 常磐大高 | 2008 | ||
松本 龍哉 | 盛岡大付 | 2021 | ||
真鍋 慧 | 広陵 | 2023 | ||
24 | 63HR | 細川 成也 | 明秀日立 | 2016 |
植田 拓 | 盛岡大付 | 2017 | ||
小林 俊輔 | 水戸商 | 2018 | ||
25 | 62HR | 畠山 和洋 | 専大北上 | 2000 |
中村 翔 | 中京大中京 | 2005 | ||
岡山 真澄 | 桐光学園 | 2005 | ||
今宮 健太 | 明豊 | 2009 | ||
渡辺 巧 | 近大泉州 | 2015 | ||
26 | 61HR | 江藤 智 | 関東(現:聖徳学園) | 1988 |
長谷川 直人 | 京都商 | 1986 | ||
山本 光将 | 熊本工 | 2002 | ||
青山 友紀 | 綾羽 | 2006 | ||
阪本 和樹 | 松阪商 | 2020 | ||
27 | 60HR | 松井 秀喜 | 星稜 | 1992 |
石井 正浩 | 桐光学園 | 2001 | ||
筒井 孝 | 松戸馬橋 | 1986 | ||
松田 宣浩 | 中京 | 2001 | ||
中村 晃 | 帝京 | 2007 | ||
辻野 昴太 | 大阪偕星学園 | 2019 | ||
28 | 59HR | 菊田 純平 | 二松学舎大付 | 2005 |
園部 聡 | 聖光学院 | 2013 | ||
29 | 58HR | 萩原 誠 | 大阪桐蔭 | 1991 |
長田 勝 | 神港学園 | 2002 | ||
瀬間仲 ノルベルト | 日章学園 | 2002 | ||
赤坂 和幸 | 浦和学院 | 2007 | ||
横尾 俊健 | 日大三 | 2011 | ||
細川 智裕 | 新田 | 2011 | ||
野村 佑希 | 花咲徳栄 | 2018 | ||
松田 憲之朗 | 龍谷大平安 | 2018 | ||
菊田 拡和 | 常総学院 | 2019 | ||
宇野 真仁朗 | 早稲田実 | 2024 | ||
30 | 57HR | 石原 慶幸 | 県岐阜商 | 1997 |
柳田 一喜 | 神港学園 | 2005 | ||
前畑 良磨 | 福岡大大濠 | 2005 | ||
菜花 大樹 | 盛岡大付 | 2014 | ||
脇本 直人 | 健大高崎 | 2014 | ||
森下 翔太 | 東海大相模 | 2018 | ||
石橋 康太 | 関東一 | 2018 |
清宮幸太郎選手(早稲田実)の出現はとても話題になりましたし、清宮選手の記録を大幅に塗り替えた佐々木麟太郎選手も夏の甲子園で話題となりました。
こうやってランキングを見てみると、当時のPL学園:清原和博選手のインパクトはリアルタイムに見ていて衝撃的でした。
というのも、私の中学時代の野球部の先輩が宇部商へ進み、KKコンビのPL学園と戦っていたからです。
また、星稜:松井秀喜選手のvs明徳義塾戦の敬遠も思い出されます。
あの時にピッチャーが真っ向勝負していたら…、ホームラン数はもう少し増えていたのかはわかりません。
でも、松井秀喜選手の試合後のインタビューに心打たれた人は多いのではないでしょうか?
甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実 (集英社文庫(日本)) [ 中村 計 ]まとめ:高校通算本塁打はあてにならない→どこで誰から打ったかが重要
高校通算本塁打ランキングは、数字で見るとスラッガーとして一つの指針となるのでわかりやすいです。
とはいえ、下記のとおり相手ピッチャーの力量や球場の大きさに左右されることは否めません。
- 対戦相手のレベルによるから
- 練習試合もカウントされるから
- グラウンドの大きさによるから
- 選手のおかれている環境によるから
格闘技で例えるなら、ボクシングのKO数であったり、ケンカ自慢の「500戦無敗」とか、タイ人キックボクサーの田舎町での試合数もカウントされているのと同じことでしょう。
格闘技の試合前会見では「KO勝ちが多い?お前は俺と戦っていないし、弱い相手としか戦ってこなかったんだろ」とか、口撃する選手がいますがまさに一理あると思います。
もちろん、単純に本塁打数が多いのは実力があるからだとは思いますが、イコール「プロで活躍できる」というわけでもありません。
金属バットと木製バットでは飛距離も扱い方も違いますからね。
ただし、個人的には「高校通算本塁打があてにならない」からといってマイナスに「たいしたことではない」と考えたくはないです。
数字として、結果として本塁打数が表れている以上、一定の評価はされるべきですからね。